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本当にあった怖い話 ~妖怪ブタインフルン~

2009年6月 9日 10:23(できる限り)毎日更新 乱れ書き日記

これは・・私の友人が実際に遭遇したお話です。
友人の名は「榊原さん(仮名、34歳)」。


あれはそう・・5月の終わり、なぜか季節外れに寒い日のことでした。

榊原さんはその数日前より発熱や体調不良を訴えており、友人の薬剤師から「一度病院で検査してみたらどうだろう」と助言を受け、重い足取りで近所の内科医院へと向かっておりました。

彼は病院が苦手でした。

院内のアルコールの独特の臭い、神妙な顔でうつむく患者さん、無機質な顔の医師・・・・・ああああ・・想像するだけで気分が重くなります。

それでも彼には今流行の新型インフルエンザだったらどうしよう、という思いがありました。大切な奥様が彼にはいます。自分がそんなパンデモニックな病気だったら彼女に辛い思いをさせてしまう・・それだけはできない。

大切な家族を守りたい、彼はそういう家族愛に溢れた男だったのです。

そうこうしているうちに無情にも内科医院に到着してしまいました。

キィ・・・

ドアを開くと緑がかったのっぺりとした壁の待合室に数名の患者さん。
受付で保険証を渡し、「少々お待ち下さい」とこれまた無機質な受付の女性に言われ、所在なげに辺りを見回す榊原さん。

待合室のソファに空きを見つけどうにか腰を下ろして一息。

ソファから改めて待合室を眺めると「検診は定期的に」「苦しくない胃カメラあります」「心の悩みは早めに相談しましょう」などと様々なポスターが目に入ります。
どうにも不健康な印象を感じてしまうのは当然かもしれませんがそれでも心は重くなります。

自分もひょっとしたら隔離される対象かもしれない・・・

『新型インフル ついに大和市で第1号』・・・・

報道される自分、悲しみにくれる愛妻・・・


どんどんと気分が落ち込んでいきます。

悲観的な発想はまたさらなる悲観を生む負の連鎖につながります。

「○○さん、治療室にどうぞ」

1人、また1人と立ち上がり、奥の部屋へと消えていきます。
もう呼ばれたら二度と帰ってくることはできないんじゃないか・・そんな想像すら浮かんできます。

頭を振りそんな想像を振り払う榊原さん。

そんなことあるものか インフルなんかに感染しててたまるか!生きて帰るんだ!

「榊原さーん お待たせしました」


ーーーーーーーーーーーーーー!!!!来た!!!!

「はい・・」

ゆらり・・と立ち上がる榊原さん。
全身からは青白いオーラのようなものが立ち上っているようにすら見えます。

隣で週刊誌を読んでいたおばあさんがあんぐりと口をあけて彼を見ていました。

「今行きます・・ええ、今すぐに」

ゆっくりと「治療室」と書かれたドアに向かって足を進めます。

看護師さんに誘導されるままドアをくぐり、部屋の中へ。

「はーい こんにちは」

・・・・!

部屋の中には白衣姿の医師が。
ただ彼の予想とは違い、ニコニコと優しそうな笑顔の初老の男性でした。

なんとなく安堵感が体の中から沸き起こり、進められるがまま医師の前の椅子へとかけます。

「はい、今日はどうしました?」

温かく、それでいて全てを見透かすような優しいまなざしを彼に向け、問う医師。
体内に留めていた言葉が溢れ出るように言葉が榊原さんは話し始めました。

自分が新型インフルエンザに感染しているんじゃないかと言うこと、それを大切な友人や愛する妻に移してしまうんじゃないかと言うこと 苦しんで悩んで病院のドアを叩いたこと。

優しい笑顔のまま全ての話を聞き終わると医師はそのままゆっくりとうなずき、

「じゃあしっかりと検査しましょうね」と一言。

なんとなく緊張の糸が少しほぐれはしたものの、硬い表情のままその後、いくつかの検査を受ける榊原さん。


そして・・


「先生・・自分は・・・自分は?」

「榊原さん」

「は、はい!」

「ふふ、大丈夫ですよ」

「え!?じゃ・・じゃあ・・・」

「ええ、新型インフルエンザなんかじゃありません」

「そ・・そうですか!!」

肺炎ですね 入院しましょう」

「んがくく」

サザエさーん!
榊原さんが先生自身に思えて仕方ありません。

ちび黒さん>私はあくまで杉山でございます。
うっかり肺炎とかキュート過ぎます。
しかし現実問題 笑い事ではないんですが・・。