うちの妻はこり症です。

Ａ型気質なのか何か一度始めるとそれを理論的に理解し、ある程度自分が満足するまでは徹底的にそれを追求する性格でして。

何でもとりあえず始めて見て自分に合ったものだけ続けていくという私のスタンスとは根本的に異なるので何度かぶつかることもあるわけなのですが。

そんな妻が先日、新しいプリンターを購入しました。
用途はずばり、自分好みの年賀状を作成するため。

と、いうのもその前段階である「写真好き」というものがそもそもありまして。

娘の写真をこれでもか！というくらい撮りためては暗室で悦に入るという趣味があるのでどこかに出かけたりする時には妻の気がすむまで撮影に付き合う、というちょっとしたひと手間がかかります。

そんな彼女の珠玉の写真集（私の写真は皆無）の中から今年の年賀状の写真を先日８時間かけて選出していたのは知っておりましたが、ある日家に帰ると真新しい白いプリンターがなぜか私の寝室にドン！と置いてありました。

「な、なんでここに置いてあるの？パソコンはリビングだろ？」

と、いう質問に「無線ＬＡＮ内臓で家の中、どこにおいても印刷できるの！凄いでしょ！」と文明の利器力いっぱいアピールする答えが返ってきましたが、どう考えてもここに置くよりパソコンのある部屋に置く方が全てにおいて自然です。

「ちょっと置きたいスペースが確保できなくてここに置かせてもらうことにしたの」

こう言いだしたら何があっても自分の考えを曲げないことは知っているのでしぶしぶＯＫする羽目に。

「それより見て！年賀状ができたの！」

そう言いながら妻が出してきたのは娘の写真が盛り込まれた年賀状。
確かに可愛くは撮れています。

「うん、かわいく撮れてるね」

「でしょ？！これから細部を手直しして今夜中に完成させるつもりなの！」

「そっか・・頑張ってね」

こと妻の作業に関しては私の口を出す余地は我が家法的に一切認められておりませんので自動的にこれくらいしか言う言葉が無くなります。

「うん！」

と、まあこんなやり取りがありまして、娘をお風呂に入れ、先に床につきます。とにかく凝り症ですので一度始まると終わるまでどれくらいかかるかわかりませんので先に寝てしまうのが習慣です。

ああ、今日も一日楽しく過ごしました。
おやすみなさい・・・・・

ｚ　ｚ　ｚ・・

ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　ｚ・・・・

ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　ｚ　・・・・（・・・ィーーン

ｚ？ｚ？ｚ　ｚ　ｚ・・・？（ィーン・・ウィーーン

ｚ　ｚ　ｚ　ｚ（ウィーーン！・・ウィーーーン！・・ウィーーーン！）

ウィーン！ウィーン！ウィーン！ウィーン！ウィーン！ウィーン！
うるさあああああああああああああああああああああああああああい！！！

わけのわからない機械音にガバッ！と飛び起きるとベッドの脇でモニターの薄明かりに下でうずくまって一心不乱にプリンターから出てくる年賀状をチェックしている妻の姿が浮かび上がっておりました。

時計を確認したところ３時。
うん、私の記憶が確かなら社会的には完全に丑三つ時だね。

物凄い勢いで安眠を妨害されましたので、さすがに眉を寄せて抗議します。

「何時だと思ってるんだよ・・・というかそもそも何で俺の真横で印刷してるんだよ」

「ここにプリンターを置いたから、かな」

「状況説明はいらないわ！わかってるわそんなこと。もう、これじゃ寝ればいだろ、子供も起きちゃうだろ」

「大丈夫、隣の部屋に寝かせてきたから」　

「うん、俺にもその手配お願いできなかったかな？」

疲労からなのか何なのかボおっというモニターの青白い光に照らされた妻の表情が全くないのが何とも不気味です。

「もう、とにかくじゃあ俺も隣の部屋で寝てるから終わったら早く寝るんだよ」

「そう願ってて。どうか元気で」

「うん、イスカンダルでも行くの？」

結局機械音は恩返しの鶴の機織りのごとく翌朝まで続きました。私からの年賀状が届いた皆さんはどうかこのお話を踏まえた上で年賀状をご覧いただければ幸いです。