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潰れる飲食店の法則である

2012年9月26日 10:08(できる限り)毎日更新 乱れ書き日記

昨日、当店のお客様で相武台にBARを経営しておられる方と健康相談そっちのけで色々とお話していた時の話である。

 

彼はめでたく脱サラを成功させ、全く分野違いのBARをつい先日開店1周年に導いた。

一般的に「二代目」と言われる私からすると0から物事を成し遂げるというのはそれだけで尊敬に値する。

祝いの言葉を伝えると共にここから2年、3年と先を見据えた店舗運営について言葉を重ねてみた。

 

私のようにこと飲食店経営などに関してはずぶの素人でしかない人間でも「潰れる飲食店の法則」というものを実はもっている。

お祝いの言葉としては甚だささやかなものではあるが、せめて何かのお役に立てば、とこれを伝えた次第である。

 

と、いうのも私の店の周りには様々な飲食店がオープンしては潰れ、またオープンしては潰れ、と、まことモグラたたきのごとき様相を繰り返している。これは一体なぜなのか。幼少の頃から疑問に思っていたことではあり、幼少のみぎりに「なんでおっちゃんの店はいつもお客さんがいないの?」と純真無垢に質問してソバットを喰らった記憶が未だに生々しく残るが、自分で店舗の経営をしていく立場になっていくつか気づいたことがある。

 

具体的に言うとまず潰れる飲食店はオープンと同時に「全品半額オープンセール」なるものを行う。

よく見かけるかとは思うがオープンから3日間は全品半額で提供する、という類のものである。

 

これをやってしまった店はまず潰れる。

 

どういうことかというと、これは店側の意図としてはまず初回、来てもらって食べて欲しい!ということなのだと思うのだが、考えてみて欲しい。

初日に500円で食ったものを次回1000円出してでも食おうと思うだろうか?少なくとも私は「否」である。

要するにいきなり値段を下げてしまうとそれが意識にインプットされ、次回以降が「高けぇな」と感じてしまうのである。だから行かない。

これがもうどうしようもないくらいの絶品であれば話はまた別なのだが、おそらくいきなり値段を下げて客引きする店で絶品に当たったことは少なくとも私の人生においては一度たりともない、皆無である。まあ大手チェーン飲食店で味もよく知ったるものであるならこれもまた話は違うのだが。知名度のない個人店舗ではやってはいけないと思う。

 

そもそも味に自慢があるのなら値下げなどせず堂々とやればいいのである。

どうしても値引きしたいというのであれば「1周年記念」とかせめてそういうある程度軌道に乗ってからすべきである。もしくは一度来ていただいた方に「餃子無料券」のようなおまけ程度で良いと思う。 

 

気持ちはわかる。

一人でも多くの人に味を知ってもらいたい、早く食べてもらいたい。

きっと多くの店長はこう思うだろう。しかし、いち消費者として言えば逆なのである。

「安くするから行く気が失せる」のである。

 

残念ながらこれをやってしまった店の行く末はだいたい同じとなる。

流れとしては①オープン三日間(安売り期間中)はそこそこ人が入る →②4日目からガクッと人が減る →③この状態が数週間程度続く →④「ランチ値下げしました」的な安売りが突如始まる →⑤一瞬だけ人が増えるがまたすぐに元に戻る(むしろその前より減る) →⑥アボーン

 

おわかりだろうか。

安売りというのは一種カンフル剤的なもので、打った瞬間だけは一時的に元気になるが、結果として「なぜ売れないのか」を考えずに値段だけを下げていくので結果として儲けは下がる、あるいはネタを落とすので味が落ちるなどして最終的にはどんどんと売上は落ちていく。このスパイラルにはまりこんでしまったらもう抜け出すのは不可能に近い。もがけばもがくほど落ちていく蟻地獄さながらである。

 

私が思うに値段を下げる時に理由を言わないからダメなのだと思う。

例えば

「うでにものすごく自信があるんですがどうしても店構えが入りづらいくて人が来ないので食べて欲しいから値下げします」

「さる流通ルートを開拓しましたので品質は変わらずに原価が3割ほど落とせましたので還元して値下げします」

こんな感じで書かれていたらどうだろうか。印象も違うのではないだろうか。

 

何の説明もなくとりあえず「値下げしました!」とか「激安!」とかそれだけ書かれるとああ、流行ってねえんだなこの店・・と同情は覚えこそすれ入ってみようとは思わない。なんと言えばいいだろう、萎えるのだ。心が、ハートが。

 

そしてこのスパイラルにはまりこんで上の⑤の後に潰れるならまだダメージとしては最小限で済むのだが、意外とここで粘ってしまうケースがあり、これが最悪なカオスを生む。

例としては中華料理に店なのにいきなりオムライスを始めるなどというのが典型的な例だが、純和風の焼鳥店なのにインド名産のバッグを売り始めたりした店もあった。こういった店はレッドゾーンを超えてどこまでも行く。ちなみに1週間後にはこのバッグも80%オフになっており、その1週間後に店は潰れた。

 

要するにブレてはいかんのである。

初志貫徹、自分がどういう店をどういうコンセプトで作っていきたいのか、そういうものが何があっても揺るがない店は潰れにくいと思う。ただ基本的に食事中に私語厳禁だの店主の言うとおりに食わない奴は店に入れないだのそういう店はそもそも何かを履き違えているのでいくら美味かろうと潰れてしまえばいいと私は個人的に思う。 事実昔地方で寄ったラーメン屋がこの「私語厳禁」の店であり、客に対する口の聞き方すら知らない店主と口論になり、大喧嘩して出てきたことがある。隕石が直撃して木っ端微塵になればいいと思う。

 

個人的な話はさておき。 

一度値段を下げたものはもはや上げることはできない。そして明確な理由もなく下げてしまった価格には魂は宿らない。

そういった魂の宿らない飲食店には人は集わない。これが真理であると私は思っている。

 

飲食店ではないが、当店にもまれに「何割かまけてくれないの?」とおっしゃるお客様が来られることがあるが、それはどんな理由があろうともお受けすることはしない。それは私の店と扱う品物に対する誇りそのものだからである。

「安易な安売りはしてはいけない」、これが私の持論である。

※私個人の主観に基づく意見でしかないのでもし万が一ご気分を害される方がおられたのなら謝罪いたします。

 

 

 

ちなみに私は母の勤めていた大学病院でこっそり3割引で生まれた子である疑惑があることはここでは触れないでおこうと思う。