過剰反応は困りものである
2012年11月29日 09:41(できる限り)毎日更新 乱れ書き日記
人のものの捉え方というのはまさに十人十色のものであるわけで。
ある人が「大丈夫だよ」と思っていてもまた別のある人は「危険だ。心配だ」となることもある。
その正否というのはあくまでも結果論に基づくものであり、何が正しいかというのは最後まで、いや、最後になってもわからないことも多々ある。
例えば私は基本的にはポジティブで細かなことにはさほど執着するタイプではないという自覚があるが、O型気質というか他の人様が気にならないことが気になったりすることはある。とはいえ世間一般で言う「神経質」という類のものではないと思う。
私の友人にもあまり細かなことをネチネチというようなタイプの人間は少ない(これは私がそういう人物に近づかないからだと思うが)のだが、例えば仕事関係の人であるとかお客様であるとか外で出会う人であるとか人生に絡む中でそういう「神経質」な人と出会うことは決して少なくはないわけで。
今日はその中でもとびっきりの人物に遭遇したというお話をしようと思う。
つい先日のことであるが、ある喫茶店にて紅茶(コーヒーが飲めない)をすすっていたときのことである。
近くの席に座っていたのは私と同世代くらいか少し上くらい、40歳前くらいの小太りの女性とそのお子さんであろう7~8歳の男の子。
私は次回横浜で行う講義の打ち合わせで担当を待っていたのだが、近くの本屋で購入した小説を読みながら優雅なティータイムを過ごしていたその矢先に事件は起こった。
「ちょっと!ちょっと!アンタ!!」
いきなり女性がすごい剣幕で金切り声をあげて近くにいた店員を呼びつけた。
「は、はいなんでしょうお客様」
呼びつけられたのは20代の女性店員。驚いた顔で女性のところへ走ってくる。
「アンタ!このコーヒー、何度で焙煎したのよ!」
「え?」
持っていたコーヒーカップを叩きつけるような勢いで女性店員にかみつく女性。どうやらコーヒーの味がお気に召さなかったらしい。
「す、すいません。何かございましたでしょうか!?」
「なにかございましたかじゃないわよ!何よこのコーヒー!いつもと味が違うのよ!」
困り果てた顔の女性店員。ま、そりゃそうだな、と思う。
「すいませんお客様。すぐに確認してまいりますので・・・」
それだけ言うとキッチンの方へと逃げていく(この表現が一番しっくりくる)。
ほどなくして店長らしき店員を伴って戻ってくると店長らしき男性が女性に謝罪し始めた。
「お客様、大変申し訳ございませんでした!なにかコーヒーがお気に召さなかったということで・・」
「そうよ!なによこれ!クリームの量もいつもより3gは少ないわよ!」
3g??
聞き間違えたかと思ったがどうやら本気で言っているらしい。
「焙煎の温度も確認致しましたがいつもと変わらないということで・・機械を用いておりますのでいつもと変わらないかと・・クリームに関しましてはいつも違う店員がつくることもございますので多少の誤差は出てしまうかと・・」
「違うったら違うのよ!いつもよりは2度は低いのよ!ドトールよりあんたのとこは3度高いから飲んでやってるのよ!それが何なのよ!」
まだ1度勝ってるじゃないですかとものすごくツッコミたかったのだがそういう雰囲気でもなさそうである。どう考えても世間的にはイチャモン以外の何者でもないのだが完全に勢いが乗っている。完全に目が座っているので止められない感じで、女性の猛攻撃は続く。
「それからここ!ここ見なさいよ!カップが湿ってるじゃないの!」
「し、湿ってる・・?と申されますと?」
「飲む時のカップの口のところがほんのり湿ってて気持ち悪いのよ!アンタんとこは店員にどういう教育してるのよ!」
完全なイチャモンを周りの空気も読まずにわめき散らす母親が小さな娘にどういう教育しているのか電気スタンドを顔の間近に押し付けて聞きたくなる衝動に駆られたが女性のマシンガンのような口撃は続く。
「お、お客様、大変申し訳ありませんでした。では新しいものと交換いたしますので・・」
「交換で済むと思ってるの!?あなた私のフェイスブックとミクシィの友人の数知ってて言ってるの!?ものすごい書き込みしてこの店にいられなくしてやろうかしら!」
ここでまさかの恐喝開始である。
とりあえず友人の数なんて知るわけもないがこういう人間と友好関係結べる人間の数は決して多くないと容易に推測はできる。
「ど、どうすればいいのでしょうか?」
「とりあえず土下座しなさいよ」
とうとう噴飯物の暴言を吐き始めた。
焙煎の温度が2度低い、クリームが3g少ない、カップの口がほんのりしめっていた(いずれも本人の主張のみ)で土下座させられたら今後「はじめまして」と土下座で挨拶をすることになりかねない。
面倒は嫌いだが完全に母親に引いている娘さんの精神衛生上も決して良くないのでさすがにこれは一言いってやらねばならないかな、と思い席を立ちかけたところ
「もういい加減にしろやババア」
まさかの反対向かいの席から20代の男性(ちょっと悪ぶってる風)が参戦。
「ば・・ババア!?あんた何なのよ!いきなり出てきてその口の利き方は!」
「てめえ周り見回してから物言えよ?わけのわからねえイチャモンつけて金切り声でみんなに迷惑かけてその上店員さんに土下座しろだ?!土下座すんのはてめえだろが!」
「な・・!」
「ああうるせえ!なんかしゃべる前に周り見てみろや、あとてめえの子供が一番かわいそうだな?てめえの言ってることでどんだけ子供が嫌な思いしてるかわかってんのか?死ねよババア!」
完璧な正論である。私が言いたいことを100%代弁してくれた。5割増で。
ものすごい剣幕で正論を叩きつけられた女性。
周囲を見回し、最後に自分の娘を見て、一言。
「なんなのよもう、この店!湿度50%以下の店とかありえないわ!」
意味不明な最後っ屁を撒き散らして娘の手を引いて店から飛び出していった。
あとに残された女性店員、店長、英雄となった男性、その他店にいた全ての人間が一体化した瞬間であった。
当店にお出でにならないことを心から願う次第である。