ある男の悲哀ヒアルロン酸
2015年11月 6日 09:29(できる限り)毎日更新 乱れ書き日記
家庭内でのトラブルというものなど極力ないに越したことはないのですが、やはり人間同士が共同生活している中でそういうものはどうしてもつきもののようでして。
かくいう我が家はやはり大抵のご家庭にもありがちな、小さな二人の子供の子育てのことで意見の対立がちょこちょこと出るわけです。まあ父親なんてのは本来どかっ、と家のことに口など出さずにどっしり構えていればいいのかもしれませんが、性格上なかなかどっしりできない小者で未成熟な私です。
その日も発端は大した内容ではなかったのですが、夜中に眠ろうとしない子供に家人が説教をしていた時に私が「夜はきちんと寝なくちゃダメだぞ!あ、でもね」と子供の良いところもアピールしてちょっとフォローしようとしたところ、「私が言い聞かせてるとこでしょ?お父さんは余計な口出さないでくれる!?ちょっと向こうへ行ってて!」とけんもほろろにはじき出されてしまいました。
家人は子育てをすごく頑張ってくれているので、いつも大変感謝していますし、だからこそ私に中途半端な口出しするな、と言いたい気持ちはもっともでよくわかるのですが、別に二人で攻め立てようとしたわけではなくて、俺も親だし可愛い愛娘がしゅんとしているところを見たらちょっと救いの手を差し伸べたくなる父親の気持ちもわかってほしい・・でも父親なんてってこんなもんか、と私もしゅんと落ち込みながら自分の部屋へととぼとぼと入り、パタン、とドアを閉めましたところ、
「ちょっと!下の子の面倒見てて!」と間髪入れずにナイフよりも鋭い家人の言葉がドアの隙間から私の背中を貫きました。
「ほぐっ・・はい」
刃のような言葉の威力に突き動かされてよろよろと部屋を出る私。
1歳になる下の子も起こされてしまったのか、所在無げにリビングにぽつんと立っていたので
「ママとおねえちゃんのお話が終わるまでおとうさんとあそんでようか^^」と声をかけたところ、かわいい笑顔でよちよちと寄ってきたのでパトカーのおもちゃやレゴブロック、ボールなどできゃっきゃきゃっきゃと遊んでおりましたところ、娘との話し合いが終わり、そのままパタンと眠った娘を見届けた家人が私と下の子が遊んでいる部屋に入ってきました。声をかける私。
私「お姉ちゃんは寝た?」
家人「うん、寝た」
「じゃあ楽しく遊んでいたからこの子も寝るかな」
「・・そうだね」
「じゃあおやすみ」
「おやすみ、あのさ」
「ん?」
「面倒見ててくれてありがとう。でもこの時間に楽しく遊ぶと覚醒しちゃうから今度からは遊ばないでくれる?」
エッ!?(* □ ) ゚ ゚
「いやだって面倒見ててって・・」
「うん、それはほんとにありがたいんだけど楽しくしちゃうとその後寝てくれなくて大変でしょ」
「そ・・・そう・・・だね・・ごめん・・」
バタン、と寝室のドアが閉まり一人取り残される私。
ガッデム。
なんだろう・・この厄介者みたいな扱いは・・・
やりきれない思いにイラついたらいいのか悲しんだらいいのかよくわからない感情が沸き起こります。
夜の時間、ということもありなんだか寂しく切なく悲しい気持ちになり、まるで自分はこの家に必要とされていないような、そんな気持ちにすらなりました。
とぼとぼと自分の部屋に入ると虚しい気持ちがさらにふつふつと湧いてきました。
・・俺はこの家に必要ないのかな・・
その時、「ブウウウウウン・・」という音にふと我に帰ると空気清浄機が動いていました。
ふふ・・なんだ、おまえ、まるで俺をなぐさめてくれてるみたいだな。
ほんとだよ、機械はいいよな、正直だよな。人間みたいに面倒くさくないし決して裏切ることはないし。
この家でおまえだけが俺の味方だよ。
そんな他愛もないことを思い浮かべてフッ、と息を吐き出して軽く笑顔を浮かべるとなんとなく心が軽やかに吹っ切れたような思いになり、空気清浄機にぽん、と手を乗せます。
「ありがとな」
ピッ ピッ ピッ ピッ
「ん?」
ピーーーーーーーツ!
誰がハウスダストだこのメカ野郎!!!
空気清浄機にバービー人形を力一杯叩きつけた後 床に泣き崩れました。