金沢・富山に舞い降りた天使 後編
2016年6月 8日 12:08(できる限り)毎日更新 乱れ書き日記
※前回のあらすじはこちらからどうぞ。
さて、愛する家族に強制的に置き去りにされ優しく提案してもらった金沢旅行。
おかげさまで北陸の美味しい海の幸にも驚くほど短時間でありつくことができ、どう考えても大混雑のGW中の観光地にいてかなりラッキー状況なのになんだろうこの猿の惑星に着いたみたいな絶望感は。
一人そんな思いに四方八方からグサグサと突き刺されつつ、店を出た私が次に向かったのは金沢随一の観光名所として名高い「兼六園」。
市場の人に教えてもらった情報によると兼六園までは市場から徒歩で２〜３０分程度の距離ということで、バスなどの移動手段を用いずに歩いて金沢を堪能するという当初の目標をそのままに、心とは裏腹にお腹は満たされたので、回復した体力をもって兼六園目指して歩き始めます。
幸い金沢の町は難しい地理もなく、教えてもらった通りの順番で方向音痴の私でも問題なく兼六園に２０分程度で辿り着きました。
文化財指定庭園として有名な兼六園。日本三大名園として名を馳せるだけあって素晴らしい、かつ広大な庭園に圧倒されます。
さらにGWのご多分に漏れず、こちらもスゴイ人の波です。
外国人観光ツアーなども乗り入れているようで人種のるつぼと化しています。
中国や韓国の方がやはり多いように見えますが、イタリア系の男性が日本人の女性をナンパしているなどなかなかシュールな光景も見られます。
そんな中を独りでアイフォンを片手に景色をパシャパシャと撮りながら歩きます。
まあしかし前述のとおり、かなり広大な庭園です。写真を撮るといってもカメラマンの心得があるわけでもなく、はたまた芸術的なアングルを自分でひねり出せるわけでもなくですし、そもそも誰に見せるわけでもない写真ですのでテンションの上がりようもありません。
それでも１時間位をかけて兼六園をまるまる１周しました。
５月だというのに快晴なのは良いのですがまあ暑いこと暑いこと、体感温度は３０度位に感じます。Tシャツ１枚になってもかなり汗をかいてしまい、お手洗い近くにあったベンチに座り、ゆっくりとペットボトルのお茶を飲みます。
ふう・・・
一息つくと改めて周りの観光客と自分との温度差を感じます。
日本人観光客のほぼ１００％は家族連れか夫婦、あるいはカップルであり、ざっと見回しても一人というのは私以外に見当たりません。一人の男性観光客でもいれば話しかけたりもできるのですが残念ながらいないようです。
余談ですが、以前に全く今回と同じ流れで出雲大社まで一人旅をしたことがあります。この時は真冬の凍えるような寒さの中で出雲大社参りをしたのですが、女性の一人観光客らしき人を見かけ話しかけようかなと一瞬思いましたところ、雪のちらつく極寒の恋愛結びの神様への参拝をしているこれはこれで話しかけられないオーラを全開にしておられたので怖くて近づくことすら出来なかった記憶が蘇ります。
そんなことを思い返しながらふと気が付くとアイフォンの電話ボタンを押している自分がいました。ものすごい寂しさがついに末梢神経にまで及んだ様子です。
ふー、そうだな、家族たちもそろそろ那須高原についている位の時間だろう、何か困りごとでも起こっていて「やっぱりお父さん連れてくればよかったー！」とか言ってる頃だな、ふふ。仕方ないな、電話してやるか。
座ったまま、ぶつぶつと呟きながら家人の番号に電話します。
ぷるるるるる ぷるるるるる ぷるｒガチャ
「あ、もしもし。僕ですけど。そっちはどうｋ「あ、おとうさんごめーん、今ちょっとみんなで牧場でポニーと遊んでて手が離せなくて！また夜にでも電話するね！あははは、はーい！今行くね！えー！？ソフトクリーム有難うーーーーー！！」
ブツッ つー つー つー つー
・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・うん。
え？そうですね、その時の僕ですか？能面でしたね。
無表情極まりない表情でゆっくりと立ち上がると特に目的もなくこれまたゆっくりとバッグを肩に背負って歩き始めます。相変わらず周囲には楽しそうに笑顔で語り合う人の波。
あはははははは、さっきのイタリア人まだナンパしてるや目障りだぞピザハット、ぶち殺されてえか。
チャッキー並みに殺害スイッチの入った状態でこの後６時間ほどかけて金沢市内の観光地を歩き、手首を切る前にと地元で有名な寿司屋に行き、ここで出会った幸せそうな若夫婦と漢方の話で盛り上がり、最終的には店内を巻き込んで「家族なんてクソ食らえだぜ！◯◯（放送禁止用語）しろ！」と楽しく大騒ぎすることになるのですが、人の優しさに触れるまでの時間がまたひとつ私を大きく、そして歪んだ形で成長させてくれたと思います。ねえ、見てよ僕の中のモンスターがこんなに大きくなったよ！
PS:
金沢・富山で出会った方は皆さん本当に親切で素敵な人ばかりでした。羨ましいです。
