花粉症=小青竜湯 ではダメな理由
2012年3月21日 11:52花粉、アレルギーのお話
花粉症の季節になると抗アレルギー薬を求めて多くの患者さんが医療機関に行かれることと思います。
その中で、最近多いのが「病院に行って漢方薬をもらった」というお話。漢方薬の名前を聞くと皆さん口を揃えて「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」とお答えになります。
どうしても病院では診察時間もわずか数分、患者様の証(症状)を十分に見る時間が取れませんので「小青竜湯=花粉症の漢方薬」という一種マニュアル的な流れで処方されてしまうことが多いのも理解できるのですが、この安易な選択は時に効果がないだけではなく、服用者の体調を崩してしまうこともあります。
なぜこの選択が間違っているのか?今日はそういうお話です。
まず小青竜湯の構成を見てみますと
①麻黄(まおう)、桂皮(けいひ)、細辛(さいしん)、乾姜(かんきょう)
②「五味子(ごみし)、半夏(はんげ)
③芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)
と大きく3部にその働きで分類することができます。それぞれの働きを書きますと・・
①の4種類は合わせることで「辛温解表」→血管を拡張し、体を温めて縮小した細動脈を拡張して毛細血管の透過性の亢進を抑える。
②の2種は「去痰、鎮咳」→寒冷刺激によって起こる痰や咳を鎮める。
③の2種は「調和鎮痙」→気管支の痙攣を抑える
と、このようになります。
これらからお分かりいただけるかもしれませんが、小青竜湯は基本的には「温める漢方薬」なんですね。だから冷えている風邪にも使いますし(風邪も「冷えているから体が発熱する」のと「熱が過剰で外に出れなくて発熱する」2タイプがあるわけです)、花粉症のタイプも「冷えている花粉症」でないといけないわけです。
日本人の花粉症の半分は「熱過剰の花粉症」ですから単純に考えても半分の花粉症には全く反対の性質をもっている漢方薬を使ってしまうことになります。
これをやってしまうと表裏が逆なので熱過剰の病気に油を注いでいるようなもの。症状が悪化してもおかしくないといっているのをご理解いただけると思います。
では例えば熱過剰の花粉症にはどういうものを使うか?当店では辛夷(しんい)、菊花(きくか)、金銀花(きんぎんか)、蒼耳子(そうじし)、茜草(せんそう)を配合した「鼻淵丸(びえんがん)」など、清熱の力を強く持っている漢方薬を使います。
熱の有無の見分けは一番簡単なのは鼻の色。体が冷えている場合は透明でサラサラした鼻水が、熱がこもっているときにはドロっとした黄色い鼻水が出ます。最低でもこの辺の見極めはしなくてはいけません。
このように、小青竜湯はとても良いお薬ではありますが全ての花粉症には対応していません。これは全ての漢方において言えることで、漢方を処方するにはいくつもの症状に対する問診が必要になりますし、病名だけでポンと処方できるようなものでは決してありません。「糖尿病?ああ、じゃあこの漢方ね」というのがいかにNGかお分かりいただけることと思います。
ですが現在そのような「マニュアル漢方」が横行しているのも事実。効かないだけならまだ良いのですが先程の話のように全く逆の性質の漢方を飲めば現在の病状を悪化させる可能性もあります。
漢方には専門的な知識が必須です。健康のためにもできるだけきちんと専門的な知識をもった場所にてご相談いただければ、と思います。